上野千鶴子、信田さよ子、北原みのり-「毒婦たちよ」(河出書房新社)
とても面白かった。座談の隣で話を聞いているような感覚。編集者も言葉の切り取りや表現がうまい。
思想については上野千鶴子の論考を敷衍している印象でそれほど新しい衝撃はなかったが、また改めて「塩酸で顔洗って出直せ」と促される感じ。
それとは別に言葉の使い方が面白い。語り方というか書き方。3時間かけ読破した後で、それぞれのあとがきを読んだ。とても読ませるあとがきだ。上野千鶴子は研究者であり発信者の言葉だ。信田は臨床家の言葉だ。で、北原。言葉が生き生きと思想の微妙な角度と複合や重層、その揺れや溶解する輪郭、変位する色相をすっぱりと表す。とても魅惑的な文章。エッセイストとかコラムニストの文章で惹かれることは滅多にない。大した人だととても感嘆した。
対談は2012年、三人揃って、もし安部が再び総理になったらと想像して、本当に怖いと重ねて述べるくだりがある。
北原はそして実際にとんでもない理由で安部政権下逮捕されている。その怖れはとっくに現実になっている。この惨憺たる暗澹たる現状からいかに目をそらさずにいるか。それを思う。