「マチウ書試論」
今朝、彼女とさまざま話をしていたのだが、僕は昨日の能楽館の話を、彼女は昨日一人で行った上野千鶴子の立命土曜講座の話を。互いにとても面白かったのだが、もともと彼女は能に詳しく僕は社会思想が好きなので会話は盛り上がって当然なのだ。上野千鶴子の講座のレジュメに吉本の「マチウ書『私』論」となっているのを僕が見つけたり、彼女は義満の寵愛を受けた世阿弥が晩年佐渡に流刑になった経緯を教えてくれたりした。お互いのフィールドが逆さまに入れ替わっているのに笑った。田中三津やシールズからあがた森魚まで会話ができるのはうれしい。考えてみれば結婚後に互いに影響を与え合ったことはあるのだろうが、関心フィールドがこれほど重なるのは得難い相手と思う。知り合った当初、画家のパスキンを知っているのに驚いたことがあった。その驚きと直感は外れていなかったのだと思う。先日も室生犀星の「蜜のあわれ」を読んだことがあると聞いたときには驚いた。「私の弱点は政治と宗教と自覚していた、その二つをあなたがフィールドにしていたから騙されてしまったw」と彼女は若い頃よく言っていたが、つまり政治と宗教以外は知見を網羅していると自負があったのだろう。僕は政治と宗教以外には文学とプロレスくらいしか知らないくせに独善の嫌な男だったから。
今日久しぶりに一緒に図書館に行った。いつものようにそれぞれ勝手に書架をめぐり、それぞれ椅子に座って好きな本を読んでいた。美味しいパン屋に寄って、帰った。